ひとり一冊、5分くらいで、本を紹介しあうはずが3時間経っていた、しずかにあつい、冬の夜。
さいごはグラフィックデザイナー・ヒロハタジュンヤさんが、淡々と、すてきな一冊を紹介してくれました。
< 登 場 人 物 >
(すきな漢字)
み)みなも / みなもとだよりとawaiya books / 素
一)一瀬大智 / とおくを描くひと / 強いて言えば「知」
さ)さっちゃん / awaiya books / 日
ヒ)ヒロハタジュンヤ / グラフィックデザイナー / 配
ど)どいちゃん / オフィスレディ / 静
→ 前書きと<0. 雑談:紙とか文庫本とかのはなし>
→ <1. プラネタリウムのふたご(著:いしいしんじ)/ みなも>
→ <1.5 雑談:みかん休憩>
→ <2. 極夜行(著:角幡唯介)/ 一瀬大智>
→ <3. 春の窓(著:安房直子)/ どいちゃん>
→ <4. 夜は、待っている。(著:糸井重里)/ さっちゃん>
< 5. Chineasy(著:ShaoLan Hsueh)/ ヒロハタジュンヤ>
(Chineasy: The New Way to Read Chinese)
広)じゃあ、僕が持ってきたのは、この「チャイニージー」っていう本で、見て分かる通り日本語が一切書いてない本なんですけど。
これは、台湾出身のグラフィックデザイナーが作った本で、
どういう本かと言うと、、英語圏…漢字を使わない文化の人に、漢字を覚えてもらうための本、なんですよ。
で、もうそんな難しいことは書いてなくて。
要はこの漢字のこういう、成り立ちとかをグラフィックを使いながら、わかりやすく説明してて。「口」やったらこういう風になってとか。こういうのがひたすら、こう続いてて。
一同:(感心する声)
広)結構強引なやつとか。あってんのか?みたいなやつもあるんですけど。
一同:(笑)
広)まぁこういうのが、つらつらつら~っと書いてある。
この本を最初に知ったのは、「WIRED」っていう雑誌があって、最新のAIとか人口知能とか、こういう未来がくるよみいたいなことが書いてあるちょっと意識高い系雑誌みたいな感じなんですけど。
たまたまデザインとアートの特集があったときがあって、僕、WIREDってけっこう好きで読むんですけど。その回、とくに記憶にのこってて、そこでこれが紹介されてて。
んでたまたまそれ読んだ年に台湾遊びに行って、書店に遊びに行ったらこれが売ってて、試しに買ってみたら、ま、面白いなぁと思って。
これやってること自体はどこでもありそうな感じなんですけど。その、自分が漢字を最初に覚えたとき、自分が漢字に触れる原初的な体験って、どんな感じやったんやろなって思ったときに、
僕がたぶん漢字を、自分のものにする、最初の瞬間っていうのは、たぶん近所のお兄ちゃんとかと、テレビゲームとか、トレーディングカードみたいなやつをやってるときに、明らかに見たことも無いような漢字がそこには書いてあって、この漢字を覚えな、対等にお兄ちゃんと遊べへん、みたいな、ところがあって。(笑)
一同:(笑)
広)で、知れずとこう…それを必死になって覚えて。
そのときっていうのは、遊びを、その、楽しんだり、進めるための純粋な、こう、ちょっと難しい言葉になっちゃうんですけど、造形の記号でしかなくて。その漢字っていうのは。
で、それ以降でも、漢字ドリルとかでノートにいっぱい漢字書いたりしてる作業っていうのは、漢字を知ってるというよりは、漢字を覚えてるっていうような感覚やって。
もちろん授業の中で「火」は象形文字でこういう風な書き方します。みたいな、ありはしたんですけど。全然そんなこと意識して覚えてなくて。それが中学校高校、ひたすら漢字を覚えるっていう作業になってて。
で、自分がグラフィックデザイナーとかになったときに、やっぱ文字を扱う仕事なんで、余計意識したってこともあるかも知れないんですけど。僕たちは身の回りに漢字があるから、それに対してそれは当たり前やと思って、それを覚えて、それを知った、知る。っていう感覚になってたと思うんですけど、なんかそれは本当に漢字を知るという行為なのか?なんていう風に、これ読んだらとふと思って。
だから、(冬に読む本というテーマに対して)僕はどちらかというとその、次小学生になる子供とかに、まぁちょっと先に予習的なことするじゃないですか。そういう子達にこれを読んでほしいなっていう。
そういうぐらいしか、家に冬っぽい本がなかったんで(笑)
一同:(笑)
広)無理やりなんですけど(笑)
そういう、漢字を覚えるってことだけを反復してきた人とか、これから漢字に触れる人にとって、漢字を知るきっかけとなったらいいなっていう。ま、絶対誰も持ってこうへんやろうなっていう、ので選んできた1冊です。
み)すごーい。
さ)面白い!
ど)フォントとかほんと、楽しく、ね、見れそう。カラフルやし、かわいらしいし。
み)習得していくっていうのがまさに、今うちの娘も習得していってるんですけど。絵本を読んでこう、絵本を読みたいから覚えていくじゃない?その、ひらがなを。でも、絵と一緒やねん、それこそ。その、記号というか。
ど)うんうんうん。
み)その驚きというか。そうやって獲得していくんやって思った。感じを今思い出しました。
ヒ)これを読むと、あの、ソクラテス。「無知の知」って知ってます?それをすごい、思い出しちゃうというか。めっちゃ知った気でいるけど…みたいな。
一同:(うなずく)
ヒ)この「火」ぐらいやったらなんか、言えるかもしんないですけど。難しい漢字書いてて、これどういう感じなのかわかんの?みたいな、、、、例えば、「犠牲」の犠とか、
一)たしかに、単独で意識することないですね。
ヒ)どういう構成なん?みたいな。
み)そっか。それ仕事柄(*ヒロハタさんはグラフィックデザイナーです)めっちゃ大事な要素ですね。その、分解していくっていう。
広)それをうまいこと使ってやったりすることもあるし。
み)それであの、ネジが出てくるんやねんな。
(あの、ねじ)
(*みなもとだよりやエレバティやawaiya booksがある地域(大阪市西淀川区/塚本〜御幣島)周辺の芸術的な催しごと。ヒロハタさんは企画やデザイン分野で活躍されています。)
ヒ)その、ネジのやつとかでも、僕は西淀川区来て2年ぐらいですけど。正直、住んで、西淀川区知ってるっていわれたら、なんとなく知ってるって言っちゃうけど。ほんまに知ってる…ちゃんと、もう一回知るために調べないと、なんか知ったことにならないというか。それの漢字バージョンです。
さ)(急に笑い出して)めっちゃ面白い(笑)
なんか、チラッと見えた「鴨」にかなり爆笑してしまいました(笑)
一同:(笑)
さ)鴨のなんかアヒルみたいな。鴨!って書いてて(笑)
ヒ)けっこう強引なやつもあって。やっぱちょっと限界があるんで。(笑)
でもまぁ、分かりやすく覚えましょうねっていう。
(一同、ぱらぱらめくるのを見つめて、おもしろいグラフィックや文字を見つける)
み)すごい。そっか、漢字圏じゃない人からしたら大人でも初めてやもんね。そっかそっか。すごい。面白い。
ど)ホントに、そういうところ(絵で描かれているもの)から来たんですよ。っていうものか、それかその人が考えて、、
さ)あぁ、あぁ、あぁ。
ど)作ったやつ…?
一)かも…作ったやつ、
ヒ)うーん…いや、これは結構、
一)怪しいところなんですか?
ヒ)うーん…その正確性については、ちょっと僕もその、(玉のページを指して)だってこれとか、スイカから生まれたって、たぶんそういう訳ではないんやと思う、
……
…………
(うす緑の、角の丸い資格に、濃い色の線が入っている絵が描かれています)
一)これたぶん宝石のほうやと思うんですよね。
み)ほう、スイカじゃないんじゃないか(笑)スイカ…
さ)あ、宝石なんですか?
一)英語が読めへんからわからへん、、
み)うーん…
ど)国?え…国じゃなくて?
さ)国ですかね?
み)国のこっち…ぎょく…。
ヒ)ぎょく、ぎょくで…
み)なんか宝石的みたいなことですよ。みたいなこと書いてる気が…
さ)スイカ…(笑)
一同:(笑)
一)たしかに、グラフィックの難しさもあるなあ、、
ヒ)このたぶん、ここ。こういう、なんて言ったらいいんですか?
一)ビジュアル?
ヒ)このビジュアル自体を、が、由来における正確性を持ってるかといえば、たぶん。そうじゃない、、
(めくりながらおもしろい字を見つける)
み)ふふふ。可愛い(笑)
一同:(笑)
ど)可愛いね(笑)
ヒ)結構後付けで。覚えるためにやってるとこもあるんですけど。
み)うーんなるほど。
さ)ほんとに覚えるためにこう考えて作った。
ヒ)考えてやってはって。
み)すごい。
ど)親しみやすい。
ヒ)由来してるわけじゃないんですけど。僕らとかが見るとなんか、こうそういえばこれってどういう…。
さ)うんうん。
ヒ)どういう。あれなんや?みたいな。
さ)これ違うやろって思うけど実際のあれ(由来)もわからない。っていうか、知らんなぁって思いますね。
み)すごーい。
ヒ)はい。
み)はーい。すごーい。
ど)いろいろあるなぁ。
ヒ)さっき、ブックカバーの話してたんですけど、ブックカバー文化って世界でけっこう日本だけなんですよ。
ブックカバーっていうか、あの、外についてる。あの、外に付いてるペラペラ(*カバー)ってもともと…。
み)外国のやつってなんか、あれよな。こうよな。こう。これ(笑)(*カバーのないよく読み込まれた文庫本を指差す)
ヒ)書店のことに配慮してるんで。
さ)何に配慮してる…?
ヒ)書店。で、売れへんくなったときに、また新しいの付け替えたらいいみたいな。
さ)ああ。
み)なるほどなるほど。ここだけを変えるみたいな。
ヒ)このまま置いてたらぼろぼろになるじゃないですか?
み)なるほどなるほど、はー…。
ヒ)というのが1冊でした。
み)勉強になります。めっちゃ面白かった。これちゃんと録れてんのかな?めっちゃ面白い…。あっ、ちゃんと録れてる!うれしい。なんかいい話いっぱい録れてました!
(あらゆる視点からひとつのデザインを生み出す、ヒロハタさんの感性を感じるすてきなセレクトでした。大人もこどもも平らになっておんなじように楽しめる一冊かもしれません。ちなみに日本でも購入できるようです。)
(さて、5人それぞれ一冊ずつ本を紹介し終わりましたが、まだ終わりません。どいちゃん以外、なぜか本を2冊持ってきていたので、それぞれのもう一冊について、次回更新いたします。どうぞおたのしみに。)