瞬き便 7(awaiya books)

(古)本と喫茶 awaiya books
の、ふたりが交わす 往復書簡(のようなもの)、瞬き便(またたきびん)。

今回は、みなもから さっちゃんへのおたよりです。


awaiya booksのふたり

みなも(帰りを待っているほう/いれもの担当/老アラサー)
さっちゃん(広島にいるほう/なかみ担当/ヤングフェアリー)

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さっちゃんへ

 

今朝は雨が降っています。
ときおり空がぱあっとあかるくなるけど、ふと遠くを見ると霧のようにぼやけた景色の、春の雨。
まちの木々が濡れて色濃くなり青々ととてもうつくしい。いい雨です。

 

それを見て、熊本で見た滝と、石のことを思い出しました。
観光のひとがいくようなところじゃない、ひっそりとした滝。ちからづよく、しずかで、すばらしいたたずまい、しめった空気やぼうぼうの木々や崖の緑まで、視界まるごと、からだぜんぶであじわう、きもちのいいところでした。あんまりすばらしいから、その、水辺にきらきらとひかる石たちを見つけたとき、せめてこの景色の一部分でも、とハンカチにひとつふたつ包んでもって帰ってみたんです。

その石を、帰ってひらいて見たらね、ぱさりと乾いた、色のあせたただの石になってしまっていたの。

よく考えたらあたりまえなんだけど、そのときの物悲しいきもちと、あのきれいなすがたをそのままうごかすことはできない、そのことじたいのうつくしさにとてもおどろいて、よく覚えているんだろうと思います。

 

あの滝へはしばらく行くことができないかもしれない。けどこうしてふいに、思い出をあじわいたのしむとができます。それは、にんげんの持つひとつのちからだろうとおもいます。

あの滝も、あんなすてきなところをおしえてくれた友だちのことも、さっちゃんきっと気に入ると思う。落ちついたら、いっしょに会いに行くことができたらいいなあ。

 

なんて、ことを書いているあいだにすっかり雨はあがりました。
ひんやりとした風が吹いています。
わるい風邪には気をつけてね。

でも、いいもわるいも、あらゆるものともに生きているんだってことを、忘れずにいよう。

 

みなもより

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